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心理学ワールド 77号 小特集 初年次教育─「大学生になる」ことの支援 藤田 哲也(法政大学) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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21 昨今日本の大学を取り巻く状況は一昔前と比べて大きく変わり,社会から期待される大学像にも変 化がみられます。高校までの学力の不足を補ったり,学生の生活習慣に教員が介入するなど,学生 に対する「面倒見の良さ」を求められることも少なくありません。今回の小特集では,大学が学生 に実際に提供しているさまざまな支援を紹介するとともに,現代の大学に求められる役割について, そして心理学が貢献できることについて考えてみたいと思います。 (旦 直子)

変わる学生,変わる大学

  本 稿 で は, 大 学 で 行 わ れ て い る 初 年 次 教 育(First-Year Experience)とはどういうもの か,また,心理学が初年次教育に おいてどう貢献できるのかについ て紹介したいと思います。 初年次教育とは  初年次教育とは,直前まで「高 校生」だった新入生を「大学生」 にするための教育であり,学習面 では,受け身の「勉強」スタイル を積極的・自発的な「学び」へと 転換させることを重視したもので あると言うことができます(藤 田,2012)。いわゆる学力低下問 題への対応のみが目的というわけ ではありません。  広義には,大学・短大の一年次 に行われること全てが初年次教育 と呼べなくもないですが,本稿で は対象となる教育プログラムをも う少し絞り込んで説明をしていき ます。山田(2004)は,各大学で 初年次の学生向けに行われている 教育内容を次の四つに大別してい ます。a.高等学校までに習得して いるはずの学習内容のリメディア ル(補習)教育,b.論文・レポー トの書き方,文章表現の仕方,プ レゼンの仕方などの学習スキル の伝達,c.大学生に求められる一 般常識や望ましい態度といった スチューデント・スキルの獲得, d.専門教育への橋渡しとなる基礎 的知識・技能に関する教育です。 これらのうち,本稿で取り上げる 初年次教育の定義に合致している のはbとcになります。いわゆる 「心理学入門」のような専門導入 科目はdに分類されます。専門導 入科目は初年次生向けの科目とし て,もちろんカリキュラム上重要 ですが,心理学を初学者に分かり やすく教えるという教育目標と, 自主的に学ぶ存在へと転換を促す という教育目標は同じではありま せん(両立しないわけではないで すが)。 初年次教育で重視すべきこと  先に述べた「受け身の勉強から 主体的な学びへの転換が求められ ている」という初年次教育の教育 目標自体は,新入生の多くが頭で は理解していると思います。ただ し,頭では理解していても,具体 的にどういった行動が自主的に学 ぶということになるのかを経験的 に体得できている新入生はほとん どいないといえるでしょう。  したがって初年次教育におい て,「何を教えるか」と同等かそ れ以上に「どう教えるか」が重要 になります。初年次教育の授業で 「自主的に学ぶ存在になれ」とこ とばでくり返し伝えても,新入生 の多くは「そんなことはわかって いる」,さらには「言われなくて も自分にはできている」と思うか もしれません。  この「わかっているつもり」 「知っているつもり」の状態にあ る学生は,自ら変わろうとしませ ん。そのため,初年次教育で重 要になるのが「気づき」になり ます。授業の中の課題を通じて, 「わかったつもりになっていただ けで,まだ十分なスキルを持って いるわけではない」ということに 受講生が気づくことができるよう な工夫があれば,そこで取り上げ られてるスキルを修得したいと思

初年次教育 ─

「大学生になる」ことの支援

法政大学文学部心理学科 教授

藤田哲也

(ふじた てつや) Profile─藤田哲也 1995年,京都大学大学院教育学研究科教育方法学専攻博士後期課程学修認定退学。 博士(教育学)。専門は認知心理学,教育心理学。著書は『絶対役立つ教養の心理 学 展開編』(編著,ミネルヴァ書房),『大学基礎講座 改増版:充実した大学生活 をおくるために』(編著,北大路書房)など。

小特集

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22 うことでしょう。しかし「もう十 分にこのスキルは修得している」 と思えば授業に身が入らないで しょう。 初年次教育の実際  上記の初年次教育の目標を達成 するための実践例として,筆者が 法政大学で行っている「基礎ゼ ミ」を紹介します。受講生が自分 自身の知識や学習スキルの修得の 程度について的確に「気づき」を 得られるよう,心理学の知見を随 所に用いています。とりわけ,学 習者自身が自分の理解の程度を正 確に評価できるようになるために 「メタ認知」を促す工夫をしてい ます。  最初のトピックである「ノート の取り方」を例示します。高校ま では「重要な情報」の取捨選択 は,その授業の教師が行っていま す。教師が重要と判断したことを 板書し,生徒はそれをノートに写 すのが基本ですね。これで定期試 験対策になるわけです。しかし大 学では,板書の仕方や量,そもそ も教科書の有無からして,実に多 様なタイプの授業が入り乱れてい ます。少なくとも「ここが重要だ よ」と明示してくれるような授業 が主流ではありません。したがっ て,受講生は様々なタイプの授業 に対して,それぞれ異なる対応を しなくては,役立つノートは取 れません。ここで,「情報の取捨 選択の主体は自分に移っている」 「多様な授業に合わせた多様な工 夫が必要」という気づきが得られ ていないと,常に同じようなノー トの取り方しかせずに,失敗しま す。さらには「どのような工夫が 自分にとって有効か」の気づきも 重要です。しかしこの試行錯誤の 段階に進むためには「工夫をする 必要性への気づき」が不可欠なの です。  「基礎ゼミ」の授業内では,い くつかの典型的なタイプの模擬授 業を短時間やってみせ,それぞれ の授業に合わせたノートを取って みるように指示をします。この段 階でうまく工夫しわけることがで きないと気づく受講生もいます が,「自分は工夫できている」と 「思い込んでいる」学生もいます。 後者の方が深刻ですので,本当に 適切なノートが取れているのか判 断できるように,翌週に模擬授業 の内容に関する論述式の小テスト をします。わずか一週間前の授業 内容を,ノートを参照しても,う まく思い出せないと気づいたと き,やっと「ノートの取り方をか えなくては」と感じてくれるよう になります。  まとめると,「基礎ゼミ」で重 視しているのは「どういうノート を取ればよいか」の答えをマニュ アル的に伝えることではなくて, 「ノートの取り方を工夫しなくて はならない」という気づきを得る ことなのです。  こうした初年次教育における学 生支援について,他の大学教員の 方々にも知ってもらうために,「初 年次教育モデル授業公開」のホー ムページを設置しています(図 1)。授業風景のビデオだけでなく 配付プリントなどの教材(図2) も公開していますので興味があっ たらアクセスしてみてください。 文 献 藤田哲也(2012)大学一年生と社会 人の間をうめる初年次教育.『発 達』 33 , 74-81. 山田礼子(2004)「わが国の導入教 育の展開と同志社大学での実践」 溝上慎一(編)『学生の学びを支 援する大学教育』東信堂 pp.246-271. 図 1 モデル授業のトップページ http://fd.media.hosei.ac.jp/ 図 2 ノートの取り方の教材例

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2 1.本講の概要 ・前回の復習=前回のノートの見直し →ペアワークによる気づき ・「ノートを取る目的」「役立つノートとは?」と いうことを考えながら授業を受けよう ・パワーポイントで授業を進める場合には? =基本的な考え方は同じでOK ・特に指示がない限り,授業中には,ルーズ リーフの表面のみにノートを取ること

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3 2.前回のノートの見直し ・前回の「ノート」(3種類)を見直そう →前回の授業内容は思い出せるか? →特に「板書中心」の授業は? ・授業中は「まだ先生の説明が耳に残っている」 ⇔時間が経過してから思い出せなくては× *前回のノートを忘れてしまった人… →予習・復習が要注意!

参照

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